英国ISA25年の答え合わせ|NISAで億万長者になる人の共通点
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2024年に開始した新NISA。実はこの制度には元ネタがあります。それが1999年に誕生したイギリスのISAです。
25年以上の歴史があり、ISAで億万長者になった人がいる一方で、資産を減らしてしまった人もいます。この記事では「ISAミリオネア」とそうではない人の違いを検証し、将来NISAを使って億万長者側に回るためのヒントを整理します。
新NISAの元ネタ「英国ISA」とは
ISAはIndividual Savings Account(個人貯蓄口座)の略で、導入されたのは1999年。日本のNISAが始まるずっと前からスタートしています。1999年以前にもPEPやTESSAといった、株式投資や貯蓄口座の税金を優遇する制度がありましたが、これらはあまりうまくいかなかったようです。そこで、より自由度を上げて始まったのがISAです。日本のNISAはまさにこれがモデルで、ISAに日本のNを付けた形ですよね。
ISAは細かく分けると4種類ほどありますが、主な分類は次の2つです。
- キャッシュISA(預金型): 預金の利息が非課税になる。NISAは預金の利息を対象にしていないので、ここが大きな違い
- 株式ISA(Stocks & Shares ISA): 株式の売却益や配当が非課税になる。ここは日本のNISAと同じ
つまりISAでは、非課税枠を預金として使ってもいいし、株式投資に使ってもいいという自由度があります。非課税枠の大きさも比べてみましょう。
| 英国ISA(1999年〜) | 新NISA(2024年〜) | |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 2万ポンド(約400万円) | 360万円 |
| 生涯投資枠 | 上限なし | 1,800万円 |
| 非課税期間 | 無期限 | 無期限 |
| 対象 | 預金・株式など | 株式・投資信託(預金は対象外) |
年間枠は同じくらいですが、最大の違いは生涯枠です。NISAには1,800万円という上限がある一方、英国ISAは毎年約400万円までなら何年間でも投資や預金を続けられます。
このようにISAはかなり柔軟性が高い制度ですが、その柔軟な設計が、マネーリテラシーの高い人に有利に働く一方で、そうではない人との格差を広げる形にもなりました。
開始から25年以上経ったISAの規模を、イギリスの歳入関税庁(HMRC)が毎年9月に公表している最新データで見ると、総資産残高はなんと8,720億ポンド、約175兆円。口座保有者は約2,130万人で、イギリスの成人の4割がISAを保有しているそうです。
本家ISAには長い歴史と莫大な運用金額という実績があります。ここを紐解けば、NISAの未来が見えてくるはずです。
25年で生まれた「ISAミリオネア」たち
ISAを使って100万ポンド、日本円で約2億円を超える資産を築いた「ISAミリオネア」が存在します。イギリスの歳入関税庁の発表によると、2023年4月時点でその数は5,000人超。株高の影響もあり、2026年にはISAミリオネアが1万7,000人を超えるという推定もあります。こちらはイギリスの老舗資産運用会社Rathbonesの数値で、1万7,000人は保有者全体の約0.08%、およそ1,200〜1,300人に1人。トップ中のトップという感じでしょうか。約1億円にあたる50万ポンド以上の規模なら、約6万人が達成しているのではないかとのことです。
では、ISAミリオネアはどんな人たちなのでしょうか。投資会社Interactive Investorの調べによると、達成者の平均年齢は73歳。男女比は男性67%・女性33%。制度が開始した1999年に40代〜50代だった方が、25年以上かけてコツコツ到達したケースが多いようです。日本の富裕層も60代以上が圧倒的に多いので、このあたりは世界共通なのかもしれませんね。
ポートフォリオも公開されています。
| 資産クラス | 割合 |
|---|---|
| 投資信託 | 41% |
| 個別株 | 35% |
| ファンド | 13% |
| ETF | 5% |
| 現金 | 5% |
注目は現金比率がたったの5%だという点です。ISAではキャッシュISAという形で預金も非課税にできるのに、ミリオネアたちはほとんどすべてを株式で運用して億万長者の高みに達しています。上位の保有銘柄も、グローバルに分散された投資信託が中心だったそうです。
行動パターンも興味深いです。年間の取引回数は32回で、短期トレードでミリオネアになった人がいかに少ないかがわかります。また、イギリスの税年度が始まる4月初旬に年間枠が開放されると、32%の人が投資可能枠2万ポンドをまとめて入れてしまうそうです。要は「年初一括」ですよね。枠を満額使い切れる入金力があるからこそ、達成者の平均年齢が70歳を超えるのでしょう。
まとめると、ISAミリオネアの共通項は「株式をグローバルに分散した投資信託で持ち、25年以上やめずに継続する」。投資の教科書どおりの行動です。面白みのない成功法こそが、成功への近道ということですね。
成功と失敗を分けた4つの分岐点
ここからは、ミリオネアを達成できた人とそうではない人の違い、つまり成功と失敗の分岐点を見ていきます。
分岐点1: 現金で持つか、株式で運用するか
イギリスの歳入関税庁によると、口座数のシェアはキャッシュISAが66%、株式ISAが33%と、キャッシュISAが圧倒的多数です。ところが資産残高のシェアで見ると、キャッシュISAが41%、株式ISAが59%と逆転します。株式の長期運用は資産を膨らませますが、預金型はそうはいかないからです。
投資銀行Barclaysのデータによると、過去20年間のインフレ調整後の実質リターンは、キャッシュISAが年マイナス1.8%、株式が年プラス3.1%。キャッシュISAに入れ続けた人は、利息で見た目の資産が増えても、インフレに追いつかず実質的には目減りしていたということです。
イギリスでは預金金利も数%あったため、「キャッシュISAで十分」と考えて66%の人が預金型を選びました。ただ、高い金利が保たれるということは物価も上がっていく場合が多く、結局は購買力が下がってしまう。そしてISAミリオネアの中に、キャッシュISAだけで到達した人は1人もいません。NISAでも口座は開設したもののリスクを恐れて少額投資にとどまる方がいますが、現金運用のままでは購買力が下がっていくというのが、ISA25年が示す残酷な現実です。
分岐点2: 少額で止まるか、枠を使い切るか
ISA利用者の平均拠出額は年1,347ポンド、日本円で約27万円。月2万円ほどの積立です。NISAで投資している方も、このくらいの金額が多いのではないでしょうか。年間上限2万ポンドに対して、6〜7%の枠しか使っていない計算になります。
一方で、枠を完全に使い切っている人も22.7%います。その多くは高所得者層で、年収3,000万円以上の人は6割が満額を拠出しています。枠をどれだけ活用できるかは年収に依存する部分も大きいですが、それが最終的な資産額に大きく影響するわけですね。
投資に慣れてきたら拠出額を増やし、リスクのあるところにお金を置く。そして増えた分に税金がかからない非課税メリットを最大限使い切る。これを徹底できるかが分かれ目です。
分岐点3: 自国株に偏るか、世界に分散するか
投資家には、自分の国の資産に偏って投資してしまう「ホームカントリーバイアス」という心理傾向があります。これはイギリスだけでなく日本にも存在します。
実際、株式ISAの残高のおよそ2割がイギリス株に、さらに3割が欧州経済領域(EEA)の企業株に投資されています。自国や近隣諸国に重点投資していると、過去20年で最もリターンが出たアメリカのテック株の恩恵を取り逃がし、ミリオネアにはなかなか到達できません。
成功した投資家はバイアスにとらわれず、グローバルに分散投資していたそうです。人気銘柄としては、全世界に分散投資する「Alliance Witan」や、テスラやNVIDIAなどのグローバル企業に投資する「Scottish Mortgage」が有名です。世界全体の成長を取り込むことでミリオネアに到達したということですね。
アメリカの投資家が自国偏重で高いリターンを得たのは、結果論に過ぎません。基本的にはいろいろな国に分散するほうが勝率は高いようです。NISAで日本株の割合が高い方もいらっしゃると思いますが、ISAの実績を見ると、全世界に分散するほうが勝率は高いのかもしれませんね。
分岐点4: 低コストか、高コストか
投資の世界では、手数料が1%違うだけで将来の資産額に大きな差が出ます。
たとえば資産1,000万円を年利7%で25年間運用するとします。信託報酬が0.1%のインデックスファンドなら25年後の資産は約5,300万円ですが、信託報酬が1%だと約4,300万円。年1%の手数料の差だけで、25年後に約1,000万円の差ができるわけですね。
ISAミリオネアの敏腕投資家たちは手数料に敏感で、低コストでグローバル分散されたインデックスファンドを買って資産を築きました。逆に手数料の高いアクティブファンドでは、複利で資産を増やすのが難しくなります。アクティブファンドがインデックスに勝つのはそもそも難しいうえに、手数料の差で最初から不利な状況に置かれるからです。日本でも、低コストな全世界株式型のインデックスファンドなら手数料は0.1%未満で済みます。
直近のリターンが高いファンドに飛びつかず、低コストなインデックス投資を継続できるか。それがミリオネアになれるかどうかの違いになっているのかもしれません。
まとめ: NISAの25年後を答え合わせしよう
ISAミリオネアを達成した人は、何も難しいことはしていません。
- 制度開始当初から、できる限りの枠を投資に使う
- 短期売買はせず、長期保有する
- リスクを取って株式に投資し、インフレに負けずに資産を増やす
- 投資先は自国にとらわれず、世界全体に分散する
- 手数料の低いファンドを選び、複利を最大化する
投資の王道を突き詰めることで、長期的にはミリオネアに到達できる。そうではない方法では難しい。それを25年の実績が示していると思います。
NISAも25年後にどういう結果になるか、楽しみですね。時間の経過とともに、答え合わせを楽しんでいきましょう。