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資産が自動で増え始めるのはいつ?複利を体感する3つのタイミング

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インデックス投資をすれば複利でお金が増える。そう聞いて始めたはずなのに、直近のS&P500のチャートを見るとむしろ年初から下がっていて、「私は騙されたのでは?」——最近投資を始めた方なら、こう感じるのも無理はないですよね。

実は資産形成において、複利を自分の体感として実感できるのは、ある程度資産が増えてからだと思っています。この記事では、複利を体感して「資産が自動で増えていく」と感じるタイミングはいつなのかを、3つの場面に分けて見ていきます。

  1. 入金をしなくても資産が勝手に増えていると感じるとき
  2. 老後のために「もうこれ以上積み立てなくていい」と感じるとき
  3. 不労所得が生活費を超えたとき

3つ目については、資産の取り崩し方(4%ルールとその改良戦略)まで踏み込んでシミュレーションしています。

タイミング1: 入金しなくても資産が勝手に増えると感じるとき

資産はやっぱり複利で増えていくんだ、と直接的に感じるのはこの瞬間だと思います。いわば本命ですね。これはシミュレーションで見るのが分かりやすいので、資産額別に「次の目標額への到達期間」を毎月の投資額別にまとめました。年利7%運用の場合です。

区間追加投資なし月3万円月5万円月10万円月20万円
100万円 → 1,000万円34.0年13.1年9.6年5.8年3.3年
500万円 → 1,500万円16.2年10.0年8.0年5.4年3.3年
1,000万円 → 2,000万円10.2年7.4年6.3年4.6年2.9年
3,000万円 → 5,000万円7.6年6.6年6.1年5.2年3.9年
5,000万円 → 1億円10.2年9.5年9.1年8.2年6.8年
1億円 → 2億円10.2年9.9年9.6年9.1年8.2年
1,000万円から月3万円・年利7%(約7.4年で2,000万円に到達)2,099万円

序盤は「入金力がすべて」の段階

100万円を運用に回している段階では、追加投資なしだと1,000万円到達まで34年もかかります。これが月3万円の積立で13.1年、月10万円なら5.8年、月20万円なら3.3年と、入金するほど期間が劇的に縮まります。

こう見ると、100万円を運用に回していても「ここでほったらかしにしよう」とはなかなかならないですよね。1万円でも多く追加投資すれば到達期間が大幅に縮まるのですから、なんとか入金したいと思うはずです。まさにこの段階は入金力がすべての段階であり、複利を体感するのが難しい段階でもあります。

500万円まで貯めても状況は大きくは変わりません。500万円から1,500万円までは追加投資なしで16.2年、月3万円で10.0年、月10万円で5.4年。500万円を貯めるのは決して簡単なことではないのですが、それでもまだ入金力の影響が大きい段階です。

1,000万円で複利のパワーを感じ始める

1,000万円から2,000万円までを見ると、追加投資なしで10.2年、月3万円で7.4年、月10万円で4.6年と、だんだん投資額による差が縮まってきます。

「1,000万円くらいを運用に回すと複利を感じ始める」と言う方は結構多いですよね。単にキリがいい数字だから、という面もあるかと思いますが、こうして数値でシミュレーションしてみても、ある程度納得できる結果になっています。

入金をやめても自動で増える、とまではまだ言えない段階かもしれません。ただ、たとえば無理をして毎月20万円を投資に回してきた方が、積立額を15万円や17万円に減らすにはちょうどいい段階と言えそうです。

3,000万円からは資産が「自走」する

3,000万円から5,000万円までの区間からが本番です。ここまでは1,000万円刻みで見てきましたが、この区間は一気に2,000万円増やす期間なのに、追加投資なしで7.6年しかかかりません。100万円スタートでは残り900万円を増やすのに34年かかったことを思うと、ものすごい縮まり方です。

そして月3万円で6.6年、月20万円でも3.9年。この辺りから明らかに入金力の影響が小さくなってきているのが分かるかと思います。資産が自走するようになり、増えるのも減るのも自分の制御が効かなくなってくる。複利が入金力に追いつき始める、そんな段階です。

5,000万円から1億円になると複利の破壊力はさらに増します。追加投資なしで10.2年、月20万円を積み立てても6.8年。5,000万円もの幅があるのに、月20万円の入金で3年半ほどしか短縮できないんですね。まとまった元本があれば複利がとんでもなく仕事をするようになって、入金が意味をなさなくなってくることがよく分かります。

最後はネタですが、1億円から2億円は追加投資なしで10.2年、月5万円の投資をしても9.6年。月5万円の入金は「完全に無意味」と言ってもいい段階まで来ました。資産1億円は日本全体の上位3%の水準とも言われるので、なかなか到達できる場所ではありませんが、やはり資産運用には夢がありますね。

これは私なりの主観ですが、資産3,000万円くらいを超えてくるとガンガン入金する必要性は薄れてきて、ペースを緩めてもいいのかなと思います。そして5,000万円くらいになれば、追加投資なしでほったらかして運用するだけでもいい。そこまで頑張ってきた方にとっては、むしろ「お金を他のことに使う」ほうがはるかに難しいかもしれませんが、全力疾走で貯めてきた方ほど、お金を他へ割り振る練習をしないと入金を緩めるタイミングが分からなくなってしまう気もしています。

タイミング2: 老後分は「もう積み立てなくていい」と感じるとき

2つ目は、いわゆるコーストFIREです。老後に必要な資産はすでに確保していて、あとは複利に任せ、今必要な生活費だけ稼げばOKという状態ですね。複利を感じる瞬間として適切かは分かりませんが、資産運用の威力を感じる瞬間であることは間違いないと思います。ハードルが比較的低く、資産形成の初心者でも目指しやすいのも特徴です。

たとえば「老後に資産3,000万円を持って引退したい」とします。この3,000万円に特別な根拠はなく、視聴者さんのコメントで平均的に多かったラインです。追加投資なしで老後までに3,000万円へ到達するために、今いくらを運用に回しておく必要があるのか。年利5%で計算しました。

老後までの年数必要な元本
40年426万円
30年694万円
20年1,131万円
10年1,842万円
694万円を年利5%で30年ほったらかし(追加投資なしで約3,000万円)2,999万円

ここで年利5%としているのは、老後資産の運用として少し保守的なリターンを見込んでいるためです。人によっては、これをインフレ調整込みの年利と考えてもらっても大丈夫です。インフレ調整込みで年利5%で増えてくれるなら、40年後の3,000万円は今の3,000万円と同じくらいの価値になる、つまり将来インフレが起きても心配しなくていいということですね。

30年、40年と運用できる方は、資産形成の後半でとんでもないスピードで資産が伸びるため、必要な元本が小さくて済みます。逆に老後までの年数が短いほど必要な元本は大きくなりますし、運用期間が短いとリターンもぶれやすく、元本割れの可能性も残ります。そのあたりは慎重に考えたいところです。

若いうちから資産運用にお金を回している方にとって、コーストFIREはそこまで難しい目標ではないと思います。達成して将来への不安が和らいだとき、「資産運用をしていてよかった」「複利ってありがたい」と感じるのではないでしょうか。

タイミング3: 不労所得が生活費を超えたとき

3つ目は、いわゆるFIREやセミリタイアです。これはどちらかというと、それまでの期間に複利をフル活用して資産形成してきたからこそたどり着ける境地ですね。

この界隈で擦り倒されているのが「4%ルール」。1998年のトリニティスタディで提唱された取り崩し戦略です。株式50%・債券50%のポートフォリオで資産の4%を毎年取り崩すと、30年間で資産が枯渇しない確率が約95%だったという結果ですね。この結果にならって、「年間生活費の25倍の資産を用意して毎年4%取り崩せば、仕事をしなくても生きていける」という説が広まっています。

「インフレしていく世の中で4%じゃ足りなくなるのでは」という話もありますが、トリニティスタディはインフレ分も考慮しています。資産の4%に加えてインフレした分を追加で取り崩しても、成功率は95%ということです。

4%ルールでFIRE(またはセミリタイア)したい場合に必要な資産額はこちらです。

月の生活費年間生活費必要な資産額
10万円120万円3,000万円
20万円240万円6,000万円
30万円360万円9,000万円
40万円480万円1億2,000万円

月10万円で生活費のすべてを賄うのは難しいでしょうから、3,000万円はサイドFIRE・セミリタイア的な考え方ですね。なんだかんだ月の生活費は30万円くらいいくという方も多いでしょうから、安心してフルFIREするなら1億円くらいの資産は欲しいところでしょうか。

4%ルールの弱点: 相場の「順序」のリスク

では1億円貯めれば安心かというと、4%ルールにも欠点があります。カッコつけて言うと「Sequence of Returns Risk」、頭文字を取ってSORRと呼ばれるものです。

成功率95%ということは、残り5%は失敗するわけですが、その失敗パターンの典型が「リタイア直後に暴落が来た場合」です。暴落時に取り崩すと安値で売却することになり、そうやって資産を食いつぶしていくと、その後相場が回復する局面で複利の恩恵を受けられず、資産がうまく回復しないまま枯渇してしまう。

つまりSORRは相場の順序のリスクです。引退直後に好調な相場が来て後から不調が来る順番なら資産は残りますが、引退直後に不調が来てから持ち直す順番だと、資産が激減したり、最悪FIREに失敗したりするわけですね。リタイア直後の5〜10年が最も危険と言われています。

一方で、こんな「欠点」もあります。資産が増えすぎる可能性のほうがはるかに高いことです。4%ルールでは、30年後の資産額が当初の2倍以上に増えているケースがかなり多いんですね。安心を買うという意味ならそれでもいいかもしれませんが、資産を増やしすぎてうまく使えないまま最後を迎えてしまう可能性も高いわけです。

ここからは、FIREの失敗を防ぎつつ資産の増えすぎも防ぐ、2つの戦略を紹介します。

対策1: ガードレール戦略

1つ目はガードレール戦略。4%ルールの改良版というか、ルールを増やしてより最適化しようという戦略です。初期の取り崩し率を4.6%〜5.4%で設定し、資産が想定以上に減れば取り崩し額を減らし、資産が増えれば取り崩し額も増やします。ルールは3つです。

  1. 上限ガードレール: 取り崩し率が初期率の120%を超えたら、取り崩し額を10%カットする
  2. 下限ガードレール: 取り崩し率が初期率の80%を下回ったら、取り崩し額を10%増やす
  3. インフレ停止ルール: ポートフォリオがマイナスの年はインフレ調整を行わない

説明を聞くだけではよく分からんって感じですよね。具体例で見てみましょう。

資産5,000万円を保有していて、初期取り崩し率5%、つまり毎年250万円を取り崩すとします。直後に暴落が来て資産が4,167万円を下回ると、取り崩し率(250万円 ÷ 資産額)が初期率5%の120%である6%を超えます。この場合は取り崩し額を10%カットして225万円に減らします。逆に資産が6,250万円を超えると取り崩し率が初期率の80%(4%)を下回るので、取り崩し額を10%増やして275万円にする。これを繰り返していくのがガードレール戦略です。

こうするとFIREに失敗しない確率ははるかに高くなります。1973年以降のアメリカ市場のデータを使ったシミュレーションでは、初期取り崩し率を4.6%に設定した場合の成功率はなんと99%。5.4%に設定しても成功率は90〜95%だったということです。初期の取り崩し率は4%ルールより高いにもかかわらず、成功する確率はもっと高いんですね。

もちろん弱点もあります。取り崩し額が変動するため、完全に仕事を辞めてフルFIREしたい人にとっては痛手です。安定した「収入」が見込めるからこそFIREに踏み切れるわけですからね。

対策2: ライフサイクル法

2つ目はライフサイクル法。自分の年齢に連動して取り崩し額を変えていく方法です。年間の取り崩し額は、今の資産残高を「残り寿命係数」で割って計算します。リタイア初期の残高ではなく毎年の残高に対して計算するため、理論上は枯渇しません。ただし、資産が減った状態で取り崩し続けると、後半の取り崩し額が極端に少なくなる可能性はあります。

この残り寿命係数、実はアメリカの制度から取ってきたものです。アメリカにも日本のiDeCoのような退職口座があり、積立時は非課税で引き出し時に課税される税繰り延べの仕組みなのですが、いつまでも引き出さない人がいると国は税金を取れません。そこでアメリカが作ったのがRMD(強制引き出し)のルールで、年齢に応じた最低引き出し額を計算するための係数がこれです。

結論として、取り崩し率は年齢50歳で2.9%、60歳で4%、80歳までいくと9.8%まで増えます。係数は残りの寿命をもとに考えられているので、いわばDIE WITH ZERO的な考え方に近い。年齢が上がるごとに取り崩し率を増やしていくのは合理的な気もしますよね。

シンプル派にはバケツ戦略

ここまでの2つの戦略が難しいという方には、バケツ戦略もあります。名前はついていますが、めちゃくちゃシンプルです。

4%ルールが失敗するのはリタイア直後に暴落があったとき。それが分かっているなら、暴落のあいだは株を売らなければいいわけです。株を売らなくても生活できるように、2〜3年分(不安な方は5年分)の生活費を現金で確保しておく。暴落時に株を売らずに済めば、その後失敗する確率をかなり下げられます。ややこしいことをしたくない方はこの方法で全然いいと思います。デメリットは、必要な資産額と現金が多くなることですね。

戦略の使い分け

一口に「不労所得で生活する」と言っても、取り崩しの戦略はいろいろあります。

戦略強み弱み
4%ルールシンプルで分かりやすい失敗リスクと資産の増えすぎ、どちらの可能性もある
ガードレール戦略成功率が高く、必要資産も少なめ取り崩し額が不安定になりやすい
ライフサイクル法理論上枯渇しない・年齢に応じて合理的取り崩し額が変動する
バケツ戦略シンプルで失敗しにくい必要な資産額・現金が多くなる

フルFIREする場合は人的資本がゼロになり、稼ぐ力がなくなるわけですから、毎年取り崩す金額は安定させたいですよね。そうなると、4%ルールにバケツ戦略で現金を用意しておく組み合わせが一番安定的に生活できると思います。手元の資産もどんどん増えていく可能性が高いので、精神的にも安心してFIREできます。

セミリタイア的にほかの収入もある方は、ガチガチに守りを固めなくても、ガードレール戦略でそのときどきの取り崩し額を変えていく形でいいのではないでしょうか。結果的に必要な資産額も少なくなり、資産を増やしすぎる可能性も減ると思います。老後の取り崩しを考えている方にはライフサイクル法が合いそうです。不安な方は係数をもう少し保守的にしてもいいですし、使いたい出費があるときは一時的に係数以上のお金を引き出してもいいかもしれませんね。

まとめ: 複利は「あとから」効いてくる

資産が自動で増えるタイミングというテーマから取り崩し戦略まで話が広がりましたが、整理するとこうなります。

  • 資産1,000万円あたりから複利のパワーを感じ始め、3,000万円を超えると資産が自走し始める
  • 5,000万円くらいになれば、追加投資なしのほったらかしでも複利が仕事をしてくれる
  • コーストFIREやFIREは、複利を積み上げてきた人がたどり着ける「資産運用の威力を実感する瞬間」

序盤は入金力がすべてで、複利を体感できないからこそ挫折しやすい。でも、仕組みとしては100万円でも500万円でも複利はちゃんと働いています。今のような調子がいいとも悪いとも言えない相場の中でもコツコツ積み立てて、その先にある複利を体感できる世界を見てみたいですね。

そして実は、お金を増やすことよりも、うまく取り崩すことのほうが難しいのかもしれません。複利で資産を増やした後にどう振る舞うか。そんな話もこれからしていければと思います。