4%ルールの成功率、なぜサイトによって87%だったり95%だったりするのか
FIRE4%ルールシミュレーション
「資産を年4%ずつ取り崩せば、30年間もつ確率は95%」— FIREを調べたことがあれば、一度は見た数字だと思います。
ところが当サイトの取り崩しシミュレーターで同じ条件(米国大型株式100%・4%・30年)を入れると、成功確率は**約87%**と表示されます。
どちらかが間違っているのでしょうか?結論から言うと、どちらも正しくて、「未来の試し方」が違うだけです。この記事では、2つの方法の違いを順番に説明します。
そもそも取り崩しシミュレーションとは
積立のシミュレーションは「毎月◯万円を年利◯%で増やすと?」という足し算の世界でした。一方、取り崩しは逆向きです。
- 手元の資産(例: 5,000万円)から、毎年決まった額(例: 4%=200万円)を引き出す
- 残りは運用を続ける
- 30年後まで資産が尽きなければ「成功」
問題は、運用リターンが毎年バラバラなことです。平均すれば年5%でも、+30%の年もあれば−40%の年もある。特に取り崩し開始直後に暴落が来ると、回復する前に資産を売って生活費にしてしまうので、平均リターンが同じでも結果が大きく変わります(これを「シーケンスリスク」と呼びます)。
だから取り崩しの世界では「平均で計算した1本の未来」ではなく、**「たくさんの未来を試して、何%で生き残れたか」**を見るのが定番になっています。その「たくさんの未来の作り方」が2流派あるわけです。
流派1: トリニティスタディ(歴史をそのままなぞる)
1998年にトリニティ大学の研究者が発表した有名な研究です。やり方はシンプルで、実際の歴史をそのまま再生します。
- 「1928年にリタイアした人」の30年間を、実際の1928〜1957年のリターンでなぞる
- 「1929年にリタイアした人」も同様に…と、1年ずつずらして全部試す
- 資産が尽きなかった開始年の割合が「成功率」
株式100%・4%・30年の条件で、この方式の成功率は約95%。世界恐慌の直前にリタイアした最悪ケースでも意外と生き残れた、というのがこの研究のインパクトでした。
ただし弱点もあります。約100年のデータから作れる「30年間」は70個ほどしかなく、しかも大部分が重なり合っています。つまり**「歴史というたった1本の道」を細切れに見ているだけ**で、歴史が見せてくれなかった不運は試せていません。
流派2: モンテカルロ法(歴史のカードをシャッフルする)
当サイトが採用している方式です。イメージはカードゲームに近いです。
- 過去98年分の「年次リターン」を1枚ずつカードにして山にする
- 毎年1枚引いては戻す、を30年分繰り返して「ありえた未来」を1本作る
- これを1万回繰り返して、資産が尽きなかった割合を数える
シャッフルして引くので、「暴落の翌年にまた暴落」のような、歴史上は起きなかったけれど起こり得た組み合わせも試されます。1万通りの未来には、歴史より幸運な道も、歴史より悲惨な道も含まれます。
なぜ87%と95%に分かれるのか
差を生む一番の要因は、実際の歴史には「自己回復のパターン」があることです。
過去の株式市場では、大暴落の後には力強い回復が来る傾向がありました(平均回帰と呼ばれます)。歴史をそのままなぞるトリニティ方式では、暴落の窓には必ずセットで回復も入ってくるので、成功率が高めに出ます。
モンテカルロ法はカードをシャッフルするので、この「暴落とセットの回復」を保証しません。悪いカードが連続で出る未来も容赦なく試します。その分、成功率は低め=保守的に出ます。
| トリニティ方式 | モンテカルロ法(当サイト) | |
|---|---|---|
| 未来の作り方 | 実際の歴史をなぞる | 歴史のリターンをシャッフル |
| 試せる未来の数 | 約70通り(重複あり) | 10,000通り |
| 暴落→回復のセット | 保たれる | 保たれない |
| 成功率の傾向 | 高め(楽観寄り) | 低め(保守寄り) |
| 4%・30年・株式100% | 約95% | 約87% |
どちらが正しいかは、実は誰にも分かりません。「未来も歴史と同じように自己回復する」と信じるならトリニティ寄り、「その保証はない」と考えるならモンテカルロ寄りです。
使うときのコツ
- 成功率は「合格ライン」ではなく、余裕度のものさしとして見る。87%と95%の間に真実があると考えれば、90%前後を狙う設計は十分堅実です
- 成功率は取り崩し率にとても敏感です。取り崩しシミュレーターで3.5%と4%を見比べると、0.5%の差の大きさが体感できます
- そもそも取り崩し期の資産は株式100%ではなく債券や現金を混ぜるのが一般的で、その場合の成功率はここでの数字とはまた変わります
まずは自分の想定額と取り崩し率で、確率がどう動くかを触って確かめてみてください。